
富山インド協会と北日本政経懇話会が主催するインド文化講演会は昨年9月9日、富山市の富山第一ホテルで開かれ、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授の田辺明生氏が「現代インドのダイナミズム-多様性社会の挑戦」と題して講演しました。
同協会の文化事業と北日本政経懇話会9月例会を兼ねて開催。インド研究の第一人者である田辺氏は「インドは文化の多様性を維持しながら発展する。多文化共生のグローバル社会のモデルになるだろう」と述べました。
東アジアや中東、インド洋に開かれている地理的な特徴と、乾燥と湿潤が入り組んだ特殊な気候が、インドで文化、宗教、言語の多様性を育んだと指摘。多くの文明は中心地が正義や美の基準を定義するのに対し、インド文明は多くの中心のネットワークで構成されていることを解説しました。
近年、格差と不平等の克服への試みとして、民衆の政治参加・社会運動が活発化していることに触れ、貧困と差別にあえぐ閉じられた「カースト社会」から、多様な人の交わりが成長の活力となる「多様性社会」への変化だと説明。「国家や大資本が主導する経済発展でも、富の再配分でもない、民主主義と経済発展が相互に補完し合う新たな発展モデルだ」と強調しました。
将来の見通しとして、GDPでは2030年ごろにインドは日本を抜き、世界第3位の経済大国になると予想。「生産年齢人口は今後も増える予定だ。格差の克服やインフラ整備など課題があるのは確かだが、貧困層の子どもたちが世界に羽ばたくチャンスをつかもうとする活力に希望を感じる」と語りました。