アサヒトラベルサービス社長:マルカス氏
1977年に初来日した際、日本を好きになり、日本に携わる仕事がしたいと旅行会社に就職した。インドは仏教発祥の地。日本の仏教関係者や文化人を案内する機会も多く、その一人が立川談志先生だった。「一緒にやろう」と声を掛けられ、ヒンディー語と英語、日本語を交えた漫才に取り組んだ。80年代に入ると、自動車メーカーのスズキがインドに進出するなど、経済分野でも日印の関係が発展し、通訳や視察先のコーディネートを担ううちに、インドビジネスを学ぶようになった。
インドを理解する上で重要なのは、一つの国と思わないことだ。広大な国土に29の州があり、気候から民族、言語、法律まで地域によって全く違う。カースト制度による差別撤廃運動は進められているが、制度自体は根強く残っていることも心に留めておいてほしい。
日本とは、仏教を起点に良好な関係が続いている。2000年に「日印グローバル・パートナーシップ」が構築されてからは、両国の首相が毎年相互に相手国を訪問するなど、さらに関係が深まっている。ビジネス上の結び付きも強くなり、インドに進出する日系企業は09年で627社、15年には1200社を超えた。
14年にナレンドラ・モディ氏が首相に就くと、税制改革をはじめ、全国民に銀行口座の開設や保険加入を推奨するなど、数々の改革が行われた。中でも重要な政策の一つが、国内外企業からの投資を促し、製造業の振興を図る「メイク・イン・インディア」だ。インドは現在、工場や道路、ハイウェイ、地下鉄などが次々と整備され、急速に成長している。また、働き手であり、消費意欲も旺盛な若年人口が多く、巨大なマーケットが形成されている。こうした環境に日本の資金力と技術力を掛け合わせれば、さまざまものが生み出せるだろう。地価がまだ安い今は、進出の好機。政府は日本企業向けに税制優遇が受けられる特区なども設け、インド進出を促している。
私は、日印の架け橋となるべく、インドのショッピングモールで日本文化を紹介するイベント「こんにちはジャパン」を17年から開催している。今後は日本製商品の展示を目的としたエキスポも開くつもりだ。インドに興味を持ちつつも、何から始めていいか分からない企業も多いだろう。まずは最初の一歩を踏み出すことがとても大切。現地で商品を展示し、反応を見て、さまざまな企業と商談してみてほしい。百聞は一見にしかず。ぜひインドに来てほしい。